秋は雨の季節
——農耕民族は空を見て暮らします——

●星と月
 ヨーロッパなどの騎馬民族は方向感覚を大事にしました。そのために、星を頼りに東西南北を判断しました。星の名前がヨーロッパ伝来のものが多かったり、星占いなどが盛んにおこなわれた所以です。
 一方、日本は農耕民族であり、星よりも月を見て暮らしました。江戸時代の人々は月を見れば今日が何日か分かったそうです。また、農耕民族にとって、作物を育てる天気は重大関心事。日照りの時にはオロオロと雨を望み、雨ばかりだと日の光を求めました。

●大気の状態が不安定
 夏の太平洋高気圧が南へ行き、大陸の冷たい高気圧が日本海や北日本へせり出します。2つの異質な空気がぶつかると、大気が不安定になって秋雨前線が発生。ジメジメと薄寒い季節が続きます。
 それにしても、秋だけでな、今年は“大気が不安定”という言葉を何回、聞いたことでしょうか。天気予報の度に聞いたような気がします。

●それにしても膨大な雨の呼び名
 自然と共に暮らしていた日本の感性は、雨にもさまざまな呼び名をつけました。
 秋に限って羅列してみると……
驟雨(しゅうう)=いきなり降る雨。にわか雨
冷雨=冷え冷えと降る晩秋の雨
白驟雨=雨脚白く降る白雨と雨粒が大きく強い雨である驟雨と合わせた言葉。断続的に激しく降る秋の雨
秋黴雨=秋ついり。梅雨のように続く秋の長雨。ついりはつゆいりが転じたもの
伊勢清めの雨=宮中の行事である神嘗祭が行われる旧暦の9月の祭礼の後を清める雨
霧雨=霧のように細かい雨。春は小糠雨という
 秋の長雨は、秋霖とも呼ばれ、またの名をすすき梅雨とも呼ばれます。そして秋の終わりから冬の初めにかけての長雨は山茶花梅雨。雨の呼び名をみても、自然と共に生きる日本人の豊かな感性がしのばれます。