愛逢月(めであいづき)
——恋人たちに幸多かれ—

●牽牛と織女の出会い月
 古代中国のこと。牛飼いの牽牛と織女は恋人同士で、恋にうかれて働かず、毎日遊び暮らしていました。それを知った天の神様の怒りにふれ、2人は天の川をはさんで対岸に引き離されてしまいました。そして、1年に1度だけ鵲(かささぎ)という鳥を並べた橋が現れ、天の川を渡って会うことを赦されました。天の川の両岸にある獅子座の牽牛星と琴座の織女星が白鳥座の近くにいる鵲の仲立ちで会うというのが中国の星祭り伝説です。

●タナバタは機織り機
 古来の日本でタナバタと言えば、棚構えのある機械、つまり布を織る機械のこと。村の災厄を除くために、汚れを知らぬ機織りの女性である棚機津女(たなばたつめ)が機屋(はたや)に籠り、天から降りてくる神様と一夜を過ごすとか。それは先祖の魂を家に迎える盆に先だって、神様に村人たちの一年の汚れを持ち帰っていただくためでした。
 上代の日本では、七夕をシチセキと音読みしていましたが、棚機津女の行事と結びつき、タナバタと読まれるようになりました。また、2つの星の祭りであるところから、二星と書いてタナバタと発音することもあったようです。

●万葉集にも登場
星祭りは古い時代に中国から伝わり、『万葉集』にも男女の恋に擬した歌がたくさん収録されています。奈良時代には宮中の行事として取り入れられました。
宮中において7月7日は重要な節目であり、相撲や詠歌などが催されました。特に女性たちは二星の願いが叶えられる日にあやかろうと、瓜や花を供え、竿の先に五色の糸を掛けて恋愛成就を願ったそうです。
今では老若男女がそれぞれ短冊に願いを書いて笹竹に結び付けるという世代を超えたお祭りになりましたね。