あの世とこの世が行き交うお彼岸
——お墓は通り道?—

●彼岸と此岸
 ご先祖様がいらっしゃるのは彼岸。向こうの岸です。私たちがいるのは此岸。こちらの岸です。川を挟んで向こうにご先祖様がいらして、こちら側に私たちの世界があります。
 春分の日と秋分の日は、太陽が真東から昇り、真西に沈みます。それによって彼岸と此岸が通じやすくなり、ご先祖様の供養をして冥福を祈り、私たちもいつかは迷いのない彼岸に到達するように祈る時期です。

●パーラミター、波羅密多
パーラミターはサンスクリット語で、漢字で表現すると波羅密多。般若心経の冒頭に出てくる「般若波羅密多」。本来は欲や煩悩や苦しみに満ちたこの世界から解脱し、迷いのない悟りの世界に到達することを表しています。
ご先祖様は迷いのない彼岸に渡り、時々、私たちの此岸においでになります。そこで、彼岸にはご先祖様の供養をして、いずれ私たちも彼岸に到達することを願うのがお彼岸の行事です。

●お彼岸は日本だけの風習
 お釈迦様は霊魂の存在はないとし、人は49日で別の存在に生まれ変わる(輪廻転生)と諭しました。そこで、お盆やお彼岸にこの世にやってくるというのはお釈迦様の教えにはありません。
 お彼岸として行事をするのは、仏教が伝わる前から存在していた先祖崇拝の名残であり、日本独自の風習だそうです。
 とにかく、お盆やお彼岸にはお墓を通してご先祖様と交流するというのも、ゆかしい行事ですね。

●墓掃除、仏壇掃除、おはぎとお花を供える
 夏の間にお墓には雑草が蔓延していることでしょう。雑草を抜き、墓石や灯篭などをタワシできれいにし、お花を供えます。
 仏壇はお掃除シートで埃を取り、細工の細かい部分はお習字の筆の糊を取ったもので埃取り。お位牌は柔らかい布で拭きとります。そしてお花を供えます。
 秋のお彼岸に供えるのは“おはぎ”。もち米とうるち米を混ぜて握り、周りは粒餡。秋の花である萩の花に見立てます。
 春のお彼岸に供えるのは“ぼたもち”。暖かいお餅にこし餡をつけて、しばらくおくと餡がひび割れます。それを春の花である牡丹に見立てます。
供え物を季節に見立てるゆかしい日本の感性ですね。