季節の変わり目は鬼に狙われる?
——いよいよ春になりますが—

●寒さ厳しい中にも春の気配が
 2月3日は節分。4日は立春になります。まだ寒さは厳しいものの、日脚が伸び、梅の花が咲き、春の気配が感じられるようになってきました。
 節分とは、文字通り季節を分ける日。本来は立春、立夏、立秋、立冬の前日を指しましたが、今では立春の前の日の行事だけが残されました。 

●自然の移ろいと歳時が密接だった太陰暦
 太陽暦ではまだ寒いうちに正月がやってきます。明治5年まで使われていた太陰暦では、元日を中心として前後半月の間に立春がやってきました。そこで、年内に立春がやってくる年もありました。『古今集』にもあるように「年のうちに春はきにけり ひととせを 去年(こぞ)とやいはむ 今年とやいはむ」と在原元方が謳ったように、年内に立春を迎えることもありました。太陰暦では自然の移ろいと歳時は現代より密接にかかわりあっていたのです。年賀状に「初春を寿ぎ」とか「新春のお祝いを」と記されるのは、その名残です。

●邪気や悪霊が忍び込みやすい季節の隙間
 季節の変わり目は季節と季節の隙間であり、邪気や悪霊が忍び込みやすく、災いが生じやすいと考えられていました。季節の循環を滞りなく超えることが自然と共に暮らす人々には最大の関心事でした。そこで、門口や軒下に邪気の嫌う棘のある柊(ひいらぎ)、侵入するとガラガラと音を立てて知らせてしまう豆殻、臭いのきつい鰯の頭などを差して邪気悪霊を追い払おうとしました。
 西欧でも季節の変わり目は邪気が入り込むと信じられていて、ハローウィンなど邪気払いの行事と言われています。

●節分の日の豆まき
 豆は五穀豊穣の五穀に数えられていて、日本人にとって最も重要な穀物でした。五穀とは、米、麦、粟、黍、豆。節分に豆を撒くのはその霊力を信じていたから。「穀粒は神の目」という思想もありました。五穀の中でも一番大きな粒である豆。神様の大きな目でしっかりと鬼を見据えることが邪気払いに有効だったのでしょう。