懐石と会席
—―親しい人と会う席の会席——

●懐に温かい石を抱く懐石
 懐石料理は、懐に温かい石(温石=おんじゃく)を抱いて腹中を温めるという意味。禅宗の僧が修行中に空腹を紛らわすために石を抱いて一時しのぎにしたということにちなんでいます。お茶事の料理であり、温石がわりに粗飯を差し上げたいという亭主の謙虚を文字にしたもので、元々簡素な料理を指していました。
 最初は料理の数も一汁一菜、一汁二菜、一汁三菜など。料理の進め方にも茶道に基づく作法があります。
 現在、料理屋で行われている懐石料理は、次のような形式です。①向付、飯、汁(味噌汁)②煮物椀③焼き物④預鉢⑤箸洗い⑥八寸⑦強肴(しいざかな)、⑧湯桶(ゆとう)・香の物

●懐石の料理を参考にした会席
 会席料理は、文化文政の頃に本格的な料理を供する料理屋が登場し、懐石料理の献立を基にして考案されました。①前菜②吸い物③お造り④煮物⑤焼き物⑥止め椀⑦止め肴⑧飯⑨汁(味噌汁)⑩香の物という形式。

●懐石と会席の違いは?
 懐石の飯と汁を献立の最後にもっていったのが会席です。それは、懐石は濃茶を美味しくいただくことであり、そのために先にお腹を満たしておくこと。一方、会席は元々酒席の料理で、お酒を美味しくいただくことが目的になっています。

●稲の収穫を感謝する季節
 10月は旧暦では11月に当たり、稲の収穫を感謝して生命力をいただく季節です(最近では稲の収穫も早くなっていますが)。
 宮中では天皇がその年に収穫された新穀を神々にささげ、五穀豊穣を祈願して神とともにそれを食す「新嘗祭」が行われます。
 現代では新米をはじめ芋や栗、茸など、さまざまな秋の味覚が出そろう時期。秋の味覚は寒い冬を乗り切るための栄養源でもあります。
会席料理とはいかなくても、健康のためにも秋の味覚を楽しみましょう!