ほんの10日間、旬の野菜が出そろって
——旬とは10日間のこと—

●上旬、中旬、下旬
 1か月を上旬、中旬、下旬と分けると、10日で区切られます(旧暦では1か月は30日ですから)。旬とは、まさに10日間のこと。
 自然の恵みは、ほんの10日間だけ美味しさの神髄を提供してくれます。四季がはっきりしている日本では(最近は四季が乱れているような気がしますが)、10日ごとに様々な素材が登場します。
 『浮世風呂』に「お江戸に生まれた衆は豆が何時出来る物やら芋は何時に実の入る物やら、旬を知りませぬ」とあります。自然と共に暮らす田舎と違って、都会では旬が失われていたということを言い表しているのですね。

●竹冠に旬と書いて筍
この時期、旬を象徴する筍が出回ります。旬という字に竹冠を乗せたほどに旬を象徴する筍。ほとんどの素材が一年中出回るようになっても筍だけはアッと言う間に店頭から姿を消してしまいます。また、筍は掘った瞬間は甘く爽やかですが、そこからえぐみが増してきます。
テレビの料理番組で、産地の掘り立ての筍を食べて、レポーターが「甘い」と言っているのを良く聞きますね。

●「走り」「旬」「名残」
 また、「走り」「旬」「名残」という呼び方もあります。
古来、旬の素材は季節を象徴するものであり、その季節には旬の材料を使って料理を作り、神々に感謝しながらいただいたものでした。中でも一番最初に出てくる素材は「走り」。日本人は初物にこだわりを持っています。10日間の最初に食べるのが初物。その幸運に巡り合ったら、東を向いてニコニコ笑うと75日長生きできるといわれました。それは一番最初に出回った素材の生命力をいただくということでもあったのでしょう。