菖蒲・蓬・粽・柏餅
——端午の節句の邪気を払う習慣—

●端午とは最初の午の日
 端午の節句の「端」とは、一番初めの意味。5月の一番初めの午の日が「端午」です。ところが、奇数の5が重なる日は“重五”といって縁起が良いとされ、端午の節句は次第に5月5日に定着しました。
 平安時代には、源流である中国に倣って菖蒲や蓬を御殿に葺きまわしました。
 菖蒲は匂いが強く、虫を寄せ付けないところから、呪力の強い植物とされていました。また、根を干して煎じて飲むと解熱作用があり、健胃や去痰に効くと言われています。菖蒲湯に入る習慣は、菖蒲の強い匂いを身につけて悪霊を寄せ付けないでおこうという意味でした。菖蒲湯に入り、菖蒲枕で寝ると、快適な目覚めが約束されるとのことです。
 蓬もまた、強い匂いで悪霊を寄せ付けないという霊力を信じたものでしょう。

●粽は茅で巻いた餅
 端午の節句には、粽や柏餅が登場します。
 粽は、茅(ち)、つまり茅(かや)で巻いた餅というのが語源。米にも餅にも霊力が宿っていますが、さらに茅にも呪力があると考えられていたようです。茅はトゲトゲして、いかにも邪気を払ってくれそうです。茅を刀剣に見立てて、魔よけの効果を期待したものでしょう。江戸時代になると、真菰(まこも)の葉や笹が用いられるようになりましたが、粽という名はそのまま残りました。

●代々家が続く柏餅
 柏餅は江戸時代頃から始まったようです。餅も餡も砂糖もぜいたく品で、晴れの日のご馳走でした。
 柏の葉は、新芽が出てくるまで古い葉が落ちません。そこで、次代が生まれるまでは当代は死なない、家が絶えないという縁起を担いだもの。子孫繁栄の願いでした。
 江戸時代の風俗辞典『守貞謾稿(もりさだまんこう)』には、「小豆餡には柏葉表を出し、味噌には裡を出して標とする」とありました。お菓子屋さんを覗いてみてください。そうなっているでしょうか。