コロナ禍での夏祭り
——疫病・害虫・風水害から逃れるため?—

●夏祭りは疫病封じ
 冬まつりは新しい年を祝って、1年の五穀豊穣を願う祭り。春はこれから始まる農業の収穫を願う祭り。秋は収穫に感謝する祭り。日本の祭りは農耕に関係深い行事ですが、夏祭りだけは別。暑くて湿気が多い日本の夏は、疫病や害虫、そして台風などの風水害から逃れることを目的としたものが多くあります。地方で行われる夏祭りは祖先の霊を迎える盆の要素が濃いのですが、都会で行われる夏祭りは疫病を封じる要素が濃厚。人口の密集している都会では、どれほど疫病が恐れられていたかが分かります。

●夏祭りといえば八坂神社
 八坂神社の境内には牛頭天王(ごずてんのう)をお祭りしていますが、それは天竺の祇園精舎の守護神であり、日本では素戔嗚尊(すさのおのみこと)とされているからです。
 祇園祭は貞観11年(869)に疫病が流行し、祇園牛頭天王の祟りであると人々は考えました。そこで、祇園の神様を祭り、神輿を担いで厄災の除去を願ったことに始まりました。八坂神社にお祭りされている牛頭天王はアバタ顔に描かれていますが、それは疫病の中でも最も恐れられていた疱瘡封じを願ったからでした。

●コロナ禍でも祭りが行われます
連日、日本最高、世界最高の陽性患者が出ているコロナ。それでも、国は休業要請とか外出自粛要請は出さず、コロナと共存する道を探っています。
そこで、何年ぶりかの夏祭りを開催する地方もあります。祇園祭もその筆頭。7月1日から始まり、31日まで様々な祭事が行われました。その賑わいをテレビなどでご覧になった方も多いかと思われます。

●蘇民将来之子孫也
 祇園祭のキーワード「蘇民将来之子孫也」は、素戔嗚尊が旅をされた時のこと。一夜の宿を提供し粟で作った食事で手厚くもてなした人がいました。それを喜んだ素戔嗚尊は、疫病の流行の際「蘇民将来之子孫也」と書いた護符を持てば必ず難から逃れると約束します。今年、その護符を拝領した人は疫病から逃れられるでしょうか。
 今年、方々で催される夏祭り。コロナのような疫病から逃れられるといいですね。