全国で夏祭りが繰り広げられます
—―残暑厳しい折、汗と喧騒の賑わい——

●農耕に深い関係があった祭り
 冬まつりは新しい年を祝って1年の五穀豊穣を願う祭り。春はこれから始まる農業の収穫を願う祭り。秋は収穫に感謝する祭り。日本の祭りは農耕に深い関係があります。
 ただ、夏祭りは別。旧暦7月に祖先の精霊を迎える盆が夏祭りと集合したものと、疫病、害虫、風水害から逃れることを目的としたものがあります。地方で行われる夏祭りは盆の要素が濃く、都会で行われる夏祭りは疫病を封じる要素が濃厚。人口が密集している都会では、どれほど疫病が恐れられていたかが分かります。

●都会では疫病封じの夏祭り
7月に行われた祇園祭は疫病封じ。八坂神社では素戔嗚尊(すさのおのみこと)をお祭りしています。境内には牛頭天皇(ごずてんのう)をお祭りしていますが、それは天竺の祇園精舎の守護神であり、日本では素戔嗚尊とされているから。
 祇園祭は、貞観11年(869)に疫病が流行し、祇園牛頭天皇の祟りであると人々は考えました。八坂神社に祭られている牛頭天皇はあばた顔に描かれていますが、それは疫病の中でも最も恐れられていた疱瘡封じを願ったからでした。

●迫力の東北3大祭り
 8月2日は青森ねぶた祭、8月3日は秋田竿燈、8月5日は山形花笠祭り。加えてこの時期、仙台でも七夕祭りが繰り広げられています。どれもこれも、予約を取るのが至難の業。人気の祭りです。
 ところで、青森ねぶた祭の“ねぶた”とは何でしょうか。
 ねぶたとは睡魔のこと。「ねぶた流れろ、まめの葉はとどまれ」とねぶた流しで歌われるように、収穫の秋に備えて睡魔を払い、勤勉に(まめ)働くようにという願いがあったもののようです。絵灯篭が現代のように巨大化したのは、灯篭に用いる紙や蝋燭の生産が向上した江戸中期以降のことでした。